警察官を目指している学生や警察官として働くことを将来の選択肢として考えている読者の疑問である「私生活の制約」について説明します。本記事の主な内容は「外泊や外出先の制限」「結婚相手の制限」「寮生活について」の三項目です。警察官として働くことの選択に関して悩んでいる読者の参考になると幸いです。
外泊や外出先の制限
警察官として採用されるとまずは訓練等の教養を受けるために全寮制の警察学校に入校することになります。大卒は六ヶ月、高卒は十ヶ月の訓練期間を終えると、それぞれの所属である警察署に着任します。基本的には、警察学校を卒業しても各警察署が管轄する警察寮で生活しなくてはなりません。
なぜ、警察学校を卒業してからも寮生活をしなければならないのかと言うと警備力の確保が目的だからです。大規模な災害や事件等、有事即応の態勢を維持するためには一極に集中した人員を管理し得る状態を保つ必要があります。
ですから、原則として警察学校を卒業してからも寮生活をしなければならないのです。

警視庁では、警察学校を卒業してからも各警察署が管理する警察寮に住まなければなりません。他の道府県警察に関しては各警察本部ごとに方針が異なります。
これらの理由から警察寮に入寮している寮員には「門限」や「外泊」等に関する制限が課されています。
門限に関しては各警察署の方針により異なりますが午後10時から深夜12時が一般的です。朝方は午前4時から午前6時の間が一般的に外出可能となる時間です。門限破りが発覚すると始末書等の罰則があります。
外泊については、各所属のトップである警察署長にその都度申請を行い決裁を頂かなければなりません。決裁はパソコンでの入力のみですので簡単です。外泊の申請とは、宿泊施設の場所や連絡先、外泊する期間を登録して許可をもらうことです。交際相手の自宅に宿泊する場合でも、その交際が申請されているのであれば許可されます。また、異性との交際を申請していない又は遊びたい等の理由では外泊自体が許可されないでしょう。しかし、実際には外泊申請を「実家に帰省するため」と宿泊場所等を偽り遊びに行くことのほうが多いです。このような、虚偽申請が発覚することは滅多にありません。また警察署から外泊先である連絡先に抜き打ちで確認されることも無いです。
外泊申請は「実家」などであれば、決済が降りない(許可されない)ことは少ないですのでご安心を。さらに、外泊の頻度に関しても基本的に制限はありません。私も現役時代には週に一回、実家に帰省していました。
まとめとして外泊に関する規則は申請すれば厳しい制限は少ないと言えます。
休日等の外出について説明します。
外出は自由です。
基本的には制約はありません。日帰りで門限までに帰寮できるのであれば外出先の制限もありません。
外出や外泊の方法は、外泊であれば決裁を受ける必要があります。他の手続きは、警察寮に備え付けの外泊簿や外出簿に氏名や連絡先等を記載して外出や外泊をします。ですので、日帰りで外出するだけであれば制限はないと言えます。
結婚相手の制限
警察官は、上司が結婚する相手を認めなければ結婚できないのか。
これは、上司個人が結婚相手を選定するのではなく、警察組織が定めたマニュアルにより結婚することができる相手なのかの選定が行われます。
警察官が反社会的な勢力(暴力団など)と関係する人物と交際や婚姻関係にある場合のリスクや世論の評価を考えれば、ある程度の制約は当然なことだと言えます。
では、どのような人物と結婚ができないのでしょうか。
まずは、暴力団関係者、次に反社会的な政党や団体に属している人物、さらには、外国人がこれに該当します。主に反社会的な政党や団体とは過激な左派系がこれに該当します。外国人に関しては、全ての国籍の外国人との結婚が認められていないのではありません。主に日本と敵対又は敵対する可能性がある国の相手に限られます。他の国籍の相手であれば、実際に外国人と結婚している警察官は存在します。
もしも、許可されない相手と結婚したい場合には「退職する」「訴える」「関係を隠して事実婚をする」これらの選択しかありません。
寮生活について

「警察寮は退寮することが出来るのか?」これが知りたいポイントであると思います。
警視庁では原則として警察学校を卒業後も全警察官が寮生活をしなければなりません。しかし、例外として家庭の事情(両親の介護が必要等)や扶養者(結婚している等)がいる場合には免除されます。そのため、正当な理由なしに警察寮から出ることは出来ません。
警察寮から退寮する方法は主に三つです。
「結婚する」「満期移動する」「昇任する」これら以外に警察寮から出ることは難しいでしょう。
「結婚する」に関しては、交際相手との同棲(結婚を見越した)も含みます。
「満期移動する」とは、五年間働くことで別の警察署に転勤となります。この場合は、警察寮から離れて一人暮らしすることが可能です。基本的に警察の組織は五年の任期で別の警察署に転属となります。また、昇任することでも転属となります。昇任とは階級が上がることです。
大卒では、巡査部長の試験に勤続二年で受験資格が与えられます。ですので、満期五年の転属を待つ前に昇任することで、いち早く警察寮を出ることができるのです。
寮生活について
寮生活について解説していきます。
まずは、警察寮は何人部屋なのかについて触れます。
警察寮は各警察署が管理しているため、場所や環境、設備はたちまちです。警察署と併設している警察寮、警察署とは離れた場所に位置する警察寮、それに、一人部屋か二人部屋かも各所属により異なります。
警察寮の部屋を分類分けすると三つのタイプに分けられます。「完全個室タイプ」「簡易個室タイプ」「二人部屋」の三つです。
完全個室タイプの部屋は、室内にトイレ等も備え付けられており、一般的なアパート同様の生活が送れます。
簡易個室タイプでは、一つの部屋に複数の括り分けされた個室があるタイプです。シェアハウスを想像して頂けるとわかりやすいと思います。
二人部屋は、言葉通り一つの部屋に二人が居住するタイプです。

二人部屋とか嫌なんだけど、どれくらいの警察署が二人部屋なの?
完全個室タイプ | (全体に占める割合)30パーセントくらい |
簡易個室タイプ | (全体に占める割合)40パーセントくらい |
二人部屋 | (全体に占める割合)30パーセントくらい |

こればかりは配属ガチャですね。残念ながら二人部屋が嫌でも変更はできません。受け入れましょう。
警察寮独自の文化
警察寮の正式名称は警備待機寮です。非常時や有事の際に警備力を確保するための目的で存在しています。そのため、寮員招集があります。寮員招集とは警備力の補充が必要の場合に招集されることを言います。その頻度は管轄している地域の状態によりたちまちです。年間で1回から3回程度あります。
寮員招集となると深夜でも出勤を強制されますが、外出や外泊で帰寮できない場合には免除されます(厳密には免除ではなく帰寮できないのだから仕方がないとの判断)。

簡単に説明すると「唐突に休日出勤させられる」ことです。
警察寮には、寮直と呼ばれる制度が存在します。
寮直とは、警察寮の清掃や警備、人員報告、荷物の受領を行う当番のことです。
この寮直は勤務外に当番制でローテーションされるものですので給料はでません。また、寮直に従事している間は寮直室と呼ばれる受付室で待機していなければなりません。寮直に従事する時間は午前8時頃から午後6時頃、午後6時頃から翌日午前8時頃までの二部制です。さらに、午前8時頃から翌日午前8時頃までを一人が通しで寮直につくこともあります。もちろん、睡眠する時間は確認されています。
寮直の当番にあたる頻度や寮直に従事する時間、寮直の仕事や規律は各警察寮の方針により様々です。寮直室ではイヤホン禁止等の厳しい規則がある警察寮や、寮直室に家庭用ゲーム機を持ち込んでいる等比較的規則が緩い警察寮、どこに配属されるかは「運」次第です。
他にも、警察寮には巡視と呼ばれるものがあります。これは、警察署の幹部が警察寮の寮員が規律の保持(特に門限破りのチェック)に努めているか、異常はないかなどを確認することを指します。具体的には、警察寮の居室を幹部が訪問して五分程度の面接を行います。訪問する居室はランダムで1室選ばれる場合、全室訪問する場合、複数室訪問する場合、特に決まったものではありませんが基本的にランダムで1室選ばれます。巡視の時間は午後8時から午後11時の間が多いです。また、巡視の時間や頻度、その方法は各警察寮により異なります。
このように、警察寮での暮らしは勤務時間外を問わず様々な制約や独自の文化があるのです。

この記事だけ読むと警察寮での衣食住はデメリットばかりであると感じてしまいますが利点もあります。それは「寮費」の安さです。寮費は月額五千円から三万円程度です。電気代やガス台、水道代、に関しては寮費に含まれている場合と含まれていない場合があります。食事に関しても同様で、それぞれの警察寮により異なります。
コメント