警視庁と県警から内定が出ました。どちらに就職するべきでしょうか。元警察官が解説します。

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県警と警視庁、どちらにも合格したけど…

「働きやすさ」とは人それぞれです。
結論として、自分が就職したい環境で働くべきです。
家庭の事情や、経済状況を踏まえて地元で働きたい場合には県警に就職する選択肢も考えられます。
けれども、警視庁と県警のどちらで働くのか迷っているのであれば警視庁を勧めます。
ちなみに、著者が警視庁を選んだ理由は「かっこいい」からです。
各道府県警察の区分に属さず東京のみ警視庁と呼ばれている唯一無二の名称から「かっこいい」と感じました。
では、そんな警視庁と県警に大きな違いがあるのでしょうか。
答えとして、大きな違いはありません。
そのため、その選択をする上で「かっこいい」との抽象的な理由でも問題がないです。
警視庁と県警で大きな違いはありません。
しかし、どちらでもいいのであれば警視庁で働くことを勧めます。
その理由として、警視庁では職員が約5万人と、多くの人物から構成される組織であるため多様性があります。
さらに、多様化する犯罪に対応する最前線を担う警視庁も、時代の変化に応じる必要があるため、特定の人物のみでは組織が機能しません。
令和5年版警察白書においても、「多彩な人材が活躍する有機的な警察組織の構築」が本文で挙げられています。

〇 社会の急速な変容に適応する組織文化の醸成
〇 様々な能力や知見を有する職員の確保と活用
〇 刑事警察等をめぐる情勢と人材の確保・育成等
〇 全ての職員が働きやすい職場づくり

これら指針は警視庁のみならず各都道府県警察が共通して掲げる目標ではありますが、それでも日本の警察を代表する警視庁の特色として近いものを感じます。
なので、警視庁は他県警と比較して警察特有の閉塞感が少ないのです。
これと同じく、部署や業種も多岐に及び警視庁でなければ経験できない仕事も多く存在します。
海外での勤務、民間企業への出向、最先端の捜査講習、SPなど警視庁独自の部門、これらに挑戦できる機会が多いのは警視庁の魅力でもあります。
著者が特に警視庁を勧める理由は他道府県警よりも優先して施策や制度が反映されることです。
以前までは交番にパソコンは導入されておらず、書類は手書きでした。
他には、交通切符を告知する際も手書き、しかし、警視庁では試験運用を兼ねてパソコンを他道府県警よりも優先して導入、切符の告知も専用の端末で処理しています。
このように、新しい「何か」に取り組む場合には、まず警視庁が率先します。
これらが「働きやすさ」と関係するのか、との疑問が生じるかと思いますが、施策や制度とは業務内容に限定されるばかりではなく、現在では「働き方改革」を始めとした「働きやすさ」求める世論から政府が関連制度を整備しています。
なので、この諸制度の恩恵や影響を受けるのであれば、真っ先に警視庁がその主体となるのです。

読者
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警察学校での教養訓練は6ヶ月と10ヶ月、その期間我慢すればいいじゃん。

著者の体感として、全国道府県の警察学校と比較しても警視庁の警察学校は「緩い」ように感じます。
警察官として働くことを決意したのであれば「6ヶ月や10ヶ月なんて辛くても我慢すればいいいじゃん」と考えるかもしれません。
しかし、警察官に憧れる気持ちと警察学校の環境に耐えられる資質があるかは別問題です。
なので、強い気持ちを持ち警察学校に入校しても退職してしまう人物は一定数存在します。
警察官として働きたいのであれば、確実に「続けられる」環境を選ぶことを勧めます。

読者
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警視庁の警察学校と道府県の警察学校では何が違うの?

警視庁の警察学校を勧める理由は「人数が多い」ことにあります。
人数が多いことのメリットは「一人に費やす労力が減る」ことです。
警察学校では「怒られる」ことが仕事です。
そんな警察学校で人数が多いと話題性が尽きることなく教官や助教の関心が分散します。
警察学校の生活では「教官や助教から目を付けられず」に溶け込むことが重要です。
教官や助教から「問題あり」と判断されたのであれば徹底的な集中攻撃を受けます。
警視庁の警察学校では、人数が多いことから一人に費やす指導が手薄になるので、これがメリットと言えます。
続いては、警察学校での授業や規則についてです。
警視庁の警察学校では、課外や休日等には携帯電話が返却されて自由に使用することができます。
しかし、他の警察学校では携帯の使用が休日のみなど、制約が警視庁と比べて大きいようです。
もちろん、警視庁よりも規則が緩い警察学校はあります。
他にも、充実した品揃えの売店、綺麗な寮など、生活面で恵まれています。
警察学校のカリキュラムにおいても警視庁は多様的な人材を雇用する傾向から、体力的な訓練や厳しさは他の警察学校と比較しても、求められる水準が低いように感じます。
県警の友人に話を聞くと、警視庁の警察学校では運動量が少ないと指摘していました。
その代表例として、警視庁の警察学校の授業には「警備実施」がありません。
「警備実施」とは、大盾を持ち部隊行動(機動隊の訓練)をする訓練です。
警察官は、その職務から体力は必要不可欠です。
そのため、警視庁の教育方針に疑問はありますが、体力的に厳しい人物でも警視庁は寛容であると言えます。

警視庁の給料体系は他の警察と比較しても高水準です。
各警察の初任給を比較しても、その差は明らかです。

 警視庁  25万9300円  
 神奈川県警   26万3200円
 千葉県警  24万3400円
 群馬県警  22万2700円
 栃木県警  21万4100円
 埼玉県警  24万4400円
 茨城県警  23万2300円
※Ⅰ類(大卒程度)

東京都内では物価が高いことから、給料以上の消費を心配する声がありますが、警視庁では警察学校を卒業しても寮生活なので他の警察機関と比べて貯金は貯まります。
警視庁の勤務形態ですが、地域課(交番勤務)は四交代制を採用しています。
他府県警では三交代制を採用している場合が多いです。
三交代制と四交代制の違いは「勤務時間の長さ」です。
嚙み砕いて説明すると四交代制では勤務時間が短いことが特徴であり、体力にゆとりを持たせて働くことができます。

警視庁の警察官として勤務してから他府県の警察に移籍はできるのか。
この結論として、できる場合もあります。
まず、本文で取り上げる移籍の意味は「採用試験を受け直す」状況ではなく、階級や実務年数を考慮した待遇を引き継ぎ他府県警に移ることを指します。
そのためには、年齢や相当な理由など厳しい条件が設けられています。
さらに、警視庁から移動することが可能な道府県警察は限られており、それぞれ条件も異なるようです。
実際に警視庁から他の警察に移動した警察官は「います」が、それでも極稀な事例です。
なので、「警視庁でしばらく務めてから地元の警察で働こう」などの易な考えは勧めません。
詳細は、採用担当者に質問しましょう。

著者が考える警視庁のデメリットは寮生活にあると思います。
警視庁では、警察学校を卒業しても寮生活を強制されます。
すると、門限を始めとする制約が課せられます
個人のプライベートに対する配慮が少ないことが警視庁のデメリットのように感じます。
しかし、寮生活であれば、光熱費や家賃が安いので一概にデメリットであるとは言えませんので、個人の捉え方次第でしょう。
警視庁の寮生活に関するトピックは以下の記事で紹介しています。

コメント

  1. 山野 愛 より:

    警視庁か地元警察か悩んでおりましたが、とても参考になりました。
    4交代制は良いですね。
    ありがとうございました。

    • 坂田章敏 より:

      コメントありがとうございます。警視庁は4交代制が特徴であり勤務時間が短いことから体にかかる負担が少ないと感じられます。しかし、警視庁の場合は110番の件数が多いことから休憩が取れず、「扱いが少なく休憩をとれることから勤務時間が長い地方の警察のほうが楽である」と考える人もいます。

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